幸せのクローバー

7.Circle of Love

 ねぇ、奈緒。私も見つけたよ。四つ葉のクローバー。弘樹に指輪つけてもらう前、ほんとに直前に、見えたんだ。
 どれだけ探しても、昔は見えなかったのにね。
 家に帰って押し花にして、弘樹にプレゼント。私が奈緒にもらったのとは、ちょうど10年離れた日付。

「あれ? 高野さん、それどうしたの?」

 休み明けの月曜日。いつも通りに会社に行くと、隣の席の今井先輩が私のほうをじっと見ていた。

「確か、先週はなかったよね?」

 先輩が見ているのは──私の左手だ。

「昨日、彼氏できたんです!」
「おお! で、誰?」

 先輩は興味津津で聞いてくるけど、誰、って聞かれても……。

「高校の時の同級生です。ずっと好きだったんですけどなかなか言えなくて」
「──ねぇ、もしかして」

 先輩の声のトーンが変わったのは、気のせいでしょうか。

「彼氏って……牧原課長?」
「ち、違います!」
「でも同級生って言ってたし、歓迎会のときも先に帰ったの2人だけだったんだよ?」

 と、先輩は私と牧原君との関係を疑っていたけど。周りで聞いてた人たちも、疑っていたけど。確かに昔は付き合ったけど。

「本当に違います!」

 って、それから何度否定したか、もう数えられなかったくらい。
 今でも、好きだけどね。二番目にね。

「ありがとう、牧原君」
「何が?」
「10年前の約束。自分に嘘はつくな、って」

 休憩にコーヒーを買いに行くと、牧原君と一緒になった。彼は最初はぽかんとしていたけど、やがて思い出してくれて。

「木良に言ったんだな。あいつ、メールくらいしろよなぁ」
「ははは。何も聞いてないの?」
「全然。おまえと2人で会いたそうにはしてたけど……事後報告ナシ」
「弘樹と、付き合うことになって……奈緒にも報告したよ」
「そうか……10年かかったか」

 ガチャン、と自販機から出てきた缶コーヒーを取り出して、牧原君は笑った。

「課長のおかげです」
「俺は何もしてないよ。それから……仕事以外で課長はやめてくれ!」

 でも、一番苦しいときに傍で支えてくれたのは牧原君だったから。牧原君が「自分に嘘をつくな」って言ってくれてなかったら、全然違う人と物足りない恋をしていたかも知れないから。帰国しなかったら、弘樹とも再会してないから。本当に、感謝しています。

「今日、お昼一緒にどう? もちろん奢るよ」
「そうか? じゃあ行こうかな。あ、そういえばあいつ、転勤て言ってなかったか? 確か本社は神戸って聞いたんだけど」
「うん。招待するから来てね、結婚式」
「──おーい! それを先に言え! 今日は俺の奢りだ!」


 3枚なのが1枚増えて、4枚になるから四合わせ。
 ハートの形をしてるのは、幸せが続きますようにっていう願い。
 LoverのアタマについてるCは……circleかなって、思います。

 まーるい幸せが、いつまでもいつまでも、続きますように。
< 7 / 7 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

ネイビーブルーの恋~1/fゆらぎ~

総文字数/125,833

恋愛(純愛)40ページ

表紙を見る
Umbrella*Cinderella

総文字数/5,912

実用・エッセイ(生活・趣味)5ページ

表紙を見る
坂の町で、君と。

総文字数/46,507

恋愛(純愛)26ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop