幼なじみ、じゃない。
「……んー眠たい……」
「遅刻しちゃうから早く準備して…!」
「……羽衣、ネクタイ結んで」
「…うぇ!?」
めんどくさい、と呟く彼に驚く……ことは、いつものことだから別にないけれど……こうも毎回、過剰に反応してしまうのが私のいけないところ。
「……もう、今日だけだからね?」
とかいうセリフを毎日言って、毎回彼のネクタイを結んでいるのは誰なのか。
私だね、と心の中で呟きながらネクタイをしゅるっと通す。
……だけど、慣れているはずなのにこんなにモタモタと時間がかかるのは、なんで。
……言うまでもなく、私が不器用だから。
「…あれ?ここはこーして……んん?」
「ふは、相変わらず不器用」
「からかってる暇あるなら自分で結んでよ…!」
「やだ」
幼児のようなセリフを言う涼は、毎回私のこんなところを見ると楽しそうに微笑む。
……ぜったい確信犯でしょ。
くそう、と頬を膨らましていると、つん、とつつかれて力がぬける。
「……なに」
「んーん、べつに」
べつに、というセリフは彼の口癖みたいなもの。
ほんと、なに考えてるか分かんない。この無気力め。
ーこんなやり取りも、いつものこと。