幼なじみ、じゃない。


これはつまり、……迷子。


この年にもなって恥ずかしい。けど、大勢の中で自分だけか浮いてしまっている気がして不安がつのる。



「……もう、帰ろうかな」



本当、最近は悪いことばっかり起こる。


最後に打ち上げられるという花火は見たかったけど、ひとりで見るくらいなら帰りたい。


ぼーっとしてると、すれ違おうとしていた人とドン、という衝撃と一緒にぶつかってしまった。



「あっ、すみません…っ」


「いいよいいよ~……って君かわいいね!?ひとり?」


「え、」



まさかの、二つ目の最悪の事態発生?


どうやらぶつかった人は数人の友達と来ているらしく、私をじろじろと観察するように見つめてきた。



「……っひとりじゃないので、」


「友達?でもそれらしき人いないし……迷子?送ってあげようか?」


「大丈夫、です」


「遠慮しないで~」



肩を捕まれて、逃げ場はもうない。始めはきっぱり断ることが出来ていたのに、だんだんと言葉に覇気がなくなってくる。




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