幼なじみ、じゃない。
いつもと変わらない学校への通り道。いつもと変わらない私たちの距離。
「学校行くのめんどくさい」と言っていた涼は、さりげなく車両側を歩いてくれている。
ちら、と見上げた先の横顔は、なんとも思っていなさそうだけど。
……ほんと、優しいんだから。
こんなだから、私はまだこの気持ちを消せないの。
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ー涼と出会ったのは、2歳のころ……らしい。
らしいと言うのは、もう思い出せないくらい昔からいっしょにいるから。
家が隣で、家族ぐるみで仲良くなって。
小学生だったある日、涼と夏祭りに来ていたら迷子になってしまって。
息を切らして、必死になって見つけに来てくれたこと、今でも鮮明に覚えてる。
『……ふぇっ……。こわかったあ……、っ』
一人ぼっちなのに、どんどん日が沈んでいくのがすごく怖かった。
だから涼が来てくれたときはすごく嬉しくて、安心してぼろぼろ泣いていた。
その時、涼がぽろぽろ流れる涙をすっと掬ってくれて。
『どこにいても、絶対羽衣のこと見つけるから』
そう言ってくれた時の涼の笑顔は、きらきらと輝いていて、眩しかったんだ。
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ーその頃から、ううん、ずっと前からこの恋は始まっていたんだと思う。
私は涼と過ごす年月が増えていくたび、この恋心は積み重なっていくばかり。
……一方通行、だけど。