幼なじみ、じゃない。
ー涼への気持ちを自覚してからの、中学3年生のとき。
涼と同じクラスになって、浮かれていた時期だった。
クラス全体で男女関係なく仲がよかったこの年が中学校で一番楽しいって思ってた。
ーだから。
ずっと聞きたいと思っていたことを尋ねたのが、私の間違いだった。
『……ねえ、涼』
『なに?』
『涼って、好きな人……いる?』
その時は、涼の部屋にいて。
何気なく、大して気にしてもない風を装って聞いてみた、内心では心臓がうるさいくらいに鳴っていた質問。
ーこの時の私に「聞くな」って、もし昔に戻れるなら忠告してあげたい。
『ーーーいるよ』
胸が抉られそうだった。張り裂けそうで、耐えられないくらい。
ーあんな思いするくらいなら、聞かなかったほうがよかったのに。
今さら後悔しても遅かった。
『……あのさ、羽衣』
『ーーーっ…わ、たし…ごめんっ、用事思い出したから帰るね…!』
ー目の前にいる涼のことが分からなくなるくらい、視界が歪んで。今にも目から雫が零れそうだった。
その姿を見られる前に、傷ついている顔を見られる前に、涼が次に言おうとしていた言葉を遮って、私はすぐに自分の家に帰った。
「好きな人いるから、これからは家に来ないで」
なんて言われてしまったらどうしようって、怖かったから。