幸せの伝書鳩 ハートフルベーカリーへようこそ！

９．

　「お母さあん　お母さあん！」　４歳くらいの女の子が泣きながら走ってきました。
でも誰も声を掛けようとはしません。　どうやら、女の子はお母さんを探しているようですけど、、、。
「お母さあん　お母さあん！」　「うるさいなあ。　静かにしろよ！」
道端でタバコを吸っていたおじさんが怖い顔をして怒っています。
女の子は怖くなって走り出しました。

　どれくらい走ったのでしょうか？　交差点にまで女の子はやってきました。
「あれあれ？　なんか美味しそうな匂いがするなあ。」　泣いていた女の子は鼻をクンクンさせながらパン屋さんの前に来ました。
その扉の前には女の人が立っています。　「お母さん！」
女の人に女の子が飛び付こうとした時、お店の扉が開きました。
「いらっしゃあい。　いらっしゃあい。　あなたも女の子もいらっしゃあい。」　ウサギちゃんがニコニコしながら手招きをしています。
女の人はどうしていいのか分からない顔でテーブルに着きました。　女の子も後からバタバタと走ってきました。
「さあ、このホットケーキを二人でお食べなさいな。　美味しいよ。」　心ちゃんが優しく言ってくれます。
女の人は眉を顰めて女の子を見てからホットケーキを二つに切りました。
それを見ていたウサギちゃんがバターと蜂蜜をたっぷりと掛けてくれました。　わあ、美味しそう。
他の妖精さんたちも羨ましそうに見詰めています。
女の人もやっと食べ始めました。　すると、、、。
　「さっきは怒ったりしてごめんね。　もう叩いたりしないからね。」　女の人が女の子に謝りました。
そしたら女の子も、「お母さん　我儘ばかり言ってごめんなさい。」って謝ったんですよ。
　エプロン姿のおじさんが出てきました。　「おやおや、仲直りしたようだね？」
「はい。　私もやっと謝ることが出来ました。」　「それでいいんだよ。　子供ってね、自分のことを大事にしたいんだ。　それはお母さんだって分かるでしょう？」
「はい。」　「怒りたくなる気持ちも分かるよ。　でもね、叩いちゃいけない。　子供が怖がってしまう。」
「ごめんなさい。」　「いいんだよ。　お母さんが優しくなってくれたらね。」
「あなたももっとお母さんに甘えていいのよ。　お母さんはあなたを大事にしたいだけ。」　「うん。」
「あなただってお母さんは大好きよね？」　「うん。」
心ちゃんはピンク色の可愛い飴をくれました。
「嫌だなって思ったらこれを舐めてね。　そしたらもっともっとお母さんが好きになるから。」
　そう、子供がお母さんに甘えるのはお母さんのことが好きだから。
だからね、お母さんも怒っちゃいけません。
その時はこう言いましょうね。
　「あらあら、そんなにお母さんのことが好きなの？　まいっちゃうなあ。」って。