私の弟はヴァンパイア。
「っ……」


下唇を噛み締めて涙を堪える。


「ちょっと待って、今治すから」

「え……?」


手をそっと退けられて、首筋顔がまた近づく。


また怖いことをされるのかと思って、ぎゅっと目を瞑った。


すると……。


ペロッと、首筋を舐められてしまったのだ。


「ひゃっ!」


変な声が出て慌てて口を塞いだ。


「ん、これで治った」

「な、治った……?」


首筋に触れると、確かに傷を感じはしなかった。


これが、吸血鬼なんだ……。


ドッドッと心臓が音を立てる。



一番最初に思い浮かんだ疑問は、どうして千秋くんは躊躇なく吸ったのに千秋くんは吸わないでいてくれたのだろう、という疑問だった。


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