ゾーイ・テイラーと魔王の側近

「どういうことですか？もしかして、誰かからのいたずら？」

クラルは争いごとを好まず、むしろ世界を平和に導こうとしているのだが、魔王という立場からまだまだ人から誤解されてしまうことも少なくない。嘘の手紙で誘き出し、クラルを傷付けようとする連中もいるのだ。

「いたずらなんかじゃないよ」

クラルはそう言った後、呪文を唱える。するとクラルの手から霞のようなものがゆっくりと出て行き、部屋中が真っ白に包まれる。

「クラル様、一体何を……」

霞のせいでルーチェの目には、そばにいたはずのクラルすら見えない。困惑していると、ルーチェの目の前に何かがぼんやりと見えてくる。

「学校？」

霞の中に学校が浮かんだ。教室では生徒たちが授業を受け、校庭では走り回っている者もいる。学校の校門前にある看板には、クラル宛てに送られてきた手紙の学校の名前があった。

「これが手紙を送ってきた学校ということですか」