ゾーイ・テイラーと魔王の側近
勉強を始めて二時間ほどが経った頃、ルーチェの自室のドアがノックされ、クラルが「お邪魔するよ」と言い部屋に入って来る。その手には、ジュースとお菓子の乗ったお盆があった。

「そろそろみんな休憩した方がいいんじゃないかと思って」

クラルがそう微笑みながら言うと、アーサーが真っ先に「ありがとうございます！！」と大袈裟なほど頭を下げながらお盆を受け取る。ルーチェは立ち上がり、クラルにお礼を言った。

「すみません、クラル様。ジュースなどの用意をしていただいて……」

アーサーとティムはルーチェの客人である。そのもてなしを主人であるクラルにさせてしまったことに、ルーチェは申し訳なさを感じた。すると、ルーチェの頭にクラルの手が優しく触れる。

「そんな顔をしないで。僕がしたくてしてるんだから」

『そう、主人は考えすぎ！』

八咫烏にもそう言われてしまう。ルーチェがホッとしていると、ティムがルーチェを呼んだ。

「ルーチェも一緒に食べよう？クッキーすごくおいしいよ。クラルさん、ありがとうございます」

「うん、僕も休憩するよ」

穏やかな時間が過ぎて行った。
< 19 / 41 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop