ゾーイ・テイラーと魔王の側近

ロネは魔法使いとはいえ、まだただの学生に過ぎない。まだ魔法は練習中のものが多く、防御魔法で二人に薄く膜が張られたとはいえ、二人を守れているかと聞かれるとわからないのだ。

（お願い、二人を守って！！）

本当ならば二人の間に入って守りたい。しかし、ロネは今目の前にいる怪物の攻撃で手一杯なのだ。怪物たちは休む暇を与えることなく攻撃をし続け、ネイサンとアーサーが剣で立ち向かっているものの、体力が持たなくなるのも時間の問題だろう。

「ッ！」

また怪物が口から光線を吐いて攻撃をする。ロネはそれを避けて攻撃魔法を放った。刹那。

大きな音と共に、地面がグラグラと揺れた。体育館全体が揺れ、まるで地震が起きたかのようである。ロネたちが驚いて顔を見合わせていると、クラルの声が響いた。

「魔法使いの男の子、魔法をかけてくれてありがとう。あとは僕たちに任せて！」

クラルの方を向いてロネは息を呑む。あの巨大な怪物は、まるで最初から存在しなかったかのように消えていたのだ。