ゾーイ・テイラーと魔王の側近

小さな子どもを抱え、女性が叫び声を上げながら走って来る。その後ろからモンスターが鋭い爪のついた手を伸ばし、女性を襲おうとする。街行く人々は悲鳴を上げ、女性の顔は真っ青になっていく。刹那。

「……大丈夫ですか！？」

ルーチェ、クラル、アーサー、ロネ、ネイサンが飛び出し、女性とモンスターの間に入り込む。ルーチェの問いかけに女性は黙ったまま頷き、走っていく。

「みんな、行くよ！」

クラルがそう言い、魔法で生み出した炎をモンスターに目掛けて放つ。それを合図にルーチェたちも攻撃をしていった。

モンスター自体はそこまで強いわけではなく、五人で戦えばあっという間にモンスターは倒れて消えていく。しかし、ここ数日本来ルーチェたちの世界にいるはずのモンスターがロネたちの世界で暴れ回ることが増えた。

「もう何回目だよ！さすがに、こんなの扉のバグとかじゃねぇだろ！」

アーサーが荒い息を吐きながら言う。その間、ルーチェの耳には街の人たちの小さな声が聞こえてきた。