ゾーイ・テイラーと魔王の側近

「ゾーイ！おはよう！」

恋人であるゾーイ・テイラーの名前をロネは呼び、彼女に駆け寄る。それまで表情のなかったゾーイは、ロネを見た瞬間にどこかホッとしたような顔を見せた。

「ロネ、おはよう」

ニコリと笑ったゾーイにロネは顔を近付け、二人の唇が重なる。チュッと小さくリップ音が響き、ゾーイは顔を真っ赤にしたまま両手で口元を覆い、ロネも真っ赤な顔をしたまま笑った。

「学校行こ？」

ロネは手を差し出す。ゾーイは「ああ」と言いながらその手を取り、二人は学校に向かって歩き出した。

ゾーイは少し前まで、この街の人だけでなく世界中の人からとある理由で恐れられてきた。しかし、その元凶とロネは友達と共に戦い、ゾーイはこの世界に居場所ができたのだ。今まで森の中にある家に籠っていたゾーイは学校へ行くことが認められ、ロネと共に通っている。

「今日の体育の授業、何だっけ？」

「今日は剣術だ」

「剣術かぁ〜。ネイサンの得意分野だね」

「そうだな。彼に教えてもらおうか」