僕の隣には吸血鬼の藤堂明日香ちゃんが・・・

魔女の森

 僕は夜、魔の森を歩いていた。なぜかというと、この森に夜、かわいい女の子が現れると聞いたからだ。
 夜の森は不気味だった。でも僕は恐怖と同時にわくわくしていた。どんなかわいい()なんだろう。大木が立ち並び、草が生い茂っていた。僕は踏み鳴らされた道を懐中電灯を持ちながら歩いていた。月がいやに煌々(こうこう)と照っていた。
 ばさっ。音がした。なんだ。僕はそちらに懐中電灯を向けた。見ると、蝙蝠(こうもり)。巨大な蝙蝠の羽根だ。そこに現れたのは巨大な蝙蝠の羽根で飛んでいる女の子!だった。吸血鬼?そんな言葉が僕の頭の中に浮かんだ。女の子は赤い髪が長い美少女だった。前髪をそろえていた。女の子はちっちゃくて驚くほどキレイな顔をしていた。僕はみとれた。
 女の子は華奢(きゃしゃ)なからだつきをしていた。女の子は小柄だった。
 女の子が僕を見た。僕はどきっとした。
 僕は言った。
 「君、吸血鬼かい?」
 「うふ」
 「違うのかい」
 「吸血鬼よ」
 僕は腕を差し出した。
 「なら僕の血を吸って、血液型をあててみな」
 「私は直接人の血は吸わない」
 「え」
 「私は直接人の血は吸わないわ」
 「吸血鬼じゃないのか」
 「いいえ、吸血鬼よ」
 「でも吸血鬼は人の血を吸うものだろう」
 「そうよ」
 「でも君は人の血を吸わない」
 「そうよ」
 「ううん」
 僕は腕を組んだ。どういうことだ。吸血鬼は人の血を吸うものだ。彼女は吸血鬼と言っている。でも人の血を吸わないと言っている。吸血鬼じゃないかというと、やはり吸血鬼だという。
 「人ではなく、動物の血を吸うなんておちじゃないだろうな」
 「ぶう」
 と、女の子はいった。
 え、そういうおちだと思った。
 「人の血って言ってるじゃない」
 「あ、そうか」
 僕は考えた。
 「ううん、わからない」
 「うふ、実は血液銀行から血液をわけてもらっているの」 
 「なあんだ」
 「考えてもみてよ。その辺の人を襲っって血を吸ったら、どうなると思うの」
 「ううむ」
 僕は考えた。
 「みんなに吸血鬼だと、ばれてしまう」
 「そうね。それもあるわ」
 「まだ何か」
 「傷害事件になってしまうわ」
 「あ」
 僕は言った。僕は片手を後頭部にやって笑った。
 「なあんだ。そういうことか」
 「なあんだ、じゃないわよ」
 「あ、悪い悪い」
 「法に触れてしまうわ」
 「そうだった」
 「刑事責任よ」
 「け、刑事!」
 「ええ」
 「でも故意でないなら、刑事責任はないんじゃあ・・・・・・」
 「刑法でも業務上過失致死傷というのがあるわ」
 「業務上過失致死傷!」
 「ええ。業務の上で必要な注意を怠って、人に傷害を負わせてしまうと問われるのよ」
 「そうか」
 「それに民事責任の過失責任もあるわ」
 「み、民事責任!」
 「そう。民事責任よ。民法不法行為よ」
 「不法行為!」
 「そう。民法709条よ」
 「709条!」
 「故意または過失に因る身体権行使妨害になるわ」
 「損害賠償責任を請求されるわ」
 「そ、そうか。そうだよね」
 「私は責任感が強いの」
 と、女の子は言った。
 「無責任じゃないのよ」
 「そうか」
 「決して責任逃れしないわ」
 「しかもかみついた人を吸血鬼にしてしまう、責任も問われるわ」
 女の子はつづけていった。
 僕は腕を組んだ。
 「うーん。それは重大だ」
 「かんだ人を眷属にしたあげく契約で自由をうばってしまうの。これは日本国憲法第18条何人もいかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服せられない。に反するわ」
 「えええええええええ」
 と、僕。
 「人身の自由権行使妨害よ」
 「だからかんだ人に自由を与えねばならないのよ」
 と、女の子はつづけた。
 「なるほど」
 「あなたは自由だって」
 「ふむ」
 「自由権よ」
 「自由権か」
 「自由権があれば、存在の自由権行使で吸血鬼にならなくても済むわ」
 「えええええええええええ」
 「吸血鬼になるか、人間になるか選ぶのよ」
 「ええええええええええええ」
 「存在を選択することの自己決定権よ」
 「存在を選択することの自己決定権!」
 
 
 
 
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