一途な気持ちは止められない
『藍くんが一緒じゃないなら反対だって言われたから今回はごめんね』
夏菜子は知らない人たちとカフェに行く理由も無いし、楽しめる気もしなかったため素直に断った。
「うん、私も楽しめるとは思わないから、断りのメッセージを入れておいたよ」
『ポロン』
またすぐさま返事が返ってきた。
『言うと思った。もちろん藍くんも一緒に連れてきてよ。みんなで楽しもうね』
「藍くんも一緒だって、それなら私も断る理由が無くなっちゃうな」
再び画面を藍に見せた。藍はまんざらでもない顔をして『じゃぁ一緒に行こう』とLIMEに変身をするように促してきた。
『分かったよ、後で場所と時間を教えてね』
返信をした後で少しだけ心が弾んだ。
誰かに遊びに誘ってもらうことなんてめったに経験していなかったからだ。
気持ちが高揚する夏菜子は、今日の夕方をそれなりに楽しみにしていた。
* * * * * *
「ここだよ、リーズナブルで、学生にも優しいカフェ。みんなでパンケーキでも食べよう!」
放課後彩に言われるがままついて歩き一件のカフェの前で立ち止まった彩はそう言い慣れた感じで店内へ入っていった。
そして、はい三好さんはこの席、藍くんはこの席に座って。と仕切り始めた。
分からないまま夏菜子は言われた席に座る。
他の3人も話を合わせていたのか迷うことなく座席に着いた。
「俺は夏菜子の隣がいいんだけど」
明らかに不貞腐れた顔をする藍が彩の言葉に反して頑として動かなくなった。
「毎日一緒にいるんだから、この時間くらいはあたしの隣に座ってくれてもいいんじゃない?」
そう言って無理やり藍を丸め込もうとする彩。
「一緒に居られないなら、俺帰るわ。行くよ夏菜子」
藍は完全に機嫌を悪くしてそう言うと夏菜子の手を引き立ち上がらせようとする。
「分かったわよ、じゃぁ三好さんの隣に座って……」
彼女は藍と仲良くなりたい。本当にそれだけなのだろうかと不安がよぎる夏菜子だった。