一途な気持ちは止められない
「俺はヴァンパイアです。気に入った子の血を吸いたがってしまう癖があります。そこだけよろしくお願いします」
ヴァン……パイア?
気に入った子の『血を吸う』……!?
藍が置いたチョークの音が響くほどにしんとする教室内。
そして突然盛り上がる生徒たち。
「ヴァンパイア? 吸血鬼ってこと?」
「太陽の光で死なないの?」
「えー? 藍くん超イケメンだから、あたしいくらでも血を上げてもいいかも~」
教室が一瞬にして騒々しい空間へと変わった。
普段から多少の寝ぐせも気にしない担任が髪の毛を掻きむしりながら大きな声でたしなめる。
「とりあえず興味があるのは分かるが大人しくしてくれ。
樋口はそこの席に座るように。
三好、色々学校やクラスのことを教えてやってくれ。
隣の席になった宿命だな」
担任は教室後方廊下側の最後尾の空いた机を指さし、その隣の机についている夏菜子に軽く笑いながら目配せする。
藍がゆっくりと指示された座席へと一直線に移動してくる。
ヴァンパイアが隣の席に……。
血を吸われてしまうの?
っていうか、ヴァンパイアって存在してたの!?
明日からニンニク持ち歩けばいいの? それとも十字架――?
もうどうしよう? どうしたらいい?
そんなこんなで、動揺しまくりの夏菜子なのだった。