一途な気持ちは止められない

嘘は嫌いなのに

　保健室で目を覚ました夏菜子は上半身を起こし、軽いめまいを覚えながら保険医を探した。


　しかし、今は居ないようだ。

　掛け時計の針の音が響く。随分と静かだ。


　藍も近くに居ると思い込んでいたが、その考えも外れた。


「久しぶりに１人だなぁ……」


　小さくつぶやいて、布団をはがしてベッドに腰かける。


　短期間で保健室にこんなにお世話になるなんて思ってなかった。


　１人になると、賑やかだなぁと思っていた藍の存在が恋しくてしょうがない。



　どこで何してるのかな。

　もう帰っちゃったのかな……。

　物思いにふけている時わずかに足音が聞こえてきた。


「三好さん？」


　聞き覚えのある声が開けっ放しだった保健室のドアから聞こえてきた。


「渡邉さん？」

　声の主が分かった途端、夏菜子は少し怪訝な顔をしてしまう。


　夏菜子の返事を聞いてほっとしたのか、彩は足取り軽く保健室の中に入ってきた。


「大丈夫？　また貧血起こしたって聞いたけど」


　そう言って彼女はニヤニヤと笑い始めた。
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