一途な気持ちは止められない
ヴァンパイアって本当に血を吸うの?
「君、可愛いね」
藍は自席に手を付いてよしかかり、席に座る前に夏菜子の方を振り向いた。
そしてそんなことを言い出したのだ。
動揺MAXしかも心の中では完全に取り乱している夏菜子にとって、そんな言葉を掛けられたものならば失神しかけるほどの大打撃。
要するに何を言われたのか理解できていないと言う状況だ。
「え? あの、え? いや、それはどういう……?」
普段正すこともない背筋を綺麗にただし、夏菜子もまたまっすぐと藍を見ている。
語彙力も失いまともな会話も出来ないでいる夏菜子に向かって藍は顔を寄せて見つめ始める。
ーーーー近いですっ!
「三好、何ちゃん?」
かろうじて名前を聞かれたことは理解した。
「み、三好夏菜子ですが……」
「夏菜子、好き」
『―――――ドキッ……!!』
「気に入っちゃった」
「え? いや、あの、何を……?」
訳も分からずに夏菜子は背筋を伸ばしたまま両手を振って否定のジェスチャーでその場をしのごうと頑張る。
しかしクラスのみんなが口笛を吹いたり叫んだりと盛り上がってしまい、一気に話題の中心に入り込んでしまった。
「夏菜子も俺を好きになってくれると嬉しいな」
そう言って藍は恋愛ドラマのお手本のように左手で夏菜子のあごを持ち上げる。
『ど、どどどうしよう……!?』
「あの、いやそれは、それは駄目じゃないでしょうか……」
見る間に顔を真っ赤にする夏菜子。
「何をされるのでしょうか……?」