一途な気持ちは止められない
急いで着替えて鏡の前に立った時に、玄関からチャイムが鳴った。
「あーもう間に合わない! しかたないからこのままで行かなくちゃ……」
玄関から声が聞こえてくる。
「いらっしゃい、あなたが藍くんね。どうぞ」
玄関から居間へ移動する音が聞こえてくる。
藍の足音だ。
久しぶりに感じる藍の存在に心が温かくなる。
早く居間に移動しなくては。
「さぁ、そこに座って。夏菜子なら今来ると思うから。コーヒー飲める?」
居間に繋がっているドアの前で一呼吸入れる夏菜子。
ゆっくりとドアを開けた。
「夏菜子!」
母親の存在も無視して、藍は夏菜子に抱き着いてきた。
「待って待って待って、親が、親が居るから……」
そんな状況を見て母親はケタケタと笑い出した。
「大丈夫よ、そんなの毎日見ていたんだから。言ったでしょ? おじいちゃん、お母さんのお父さんがヴァンパイアだって」
そういえば、保険医の先生がヴァンパイアは一途だって言ってた。
おじいちゃんもそうだったのかな?
「来たか……」
続いて居間に入ってきたのは、おじいちゃんだった。
「ヴァンパイアに会うのは何十年振りだろうかね。もともと少ない種族だからこんな出会いは滅多にない」