一途な気持ちは止められない

「初めまして! ヴァンパイアの樋口藍です。よろしくお願いします」


 そう言いながらも、藍は夏菜子を抱きしめたままだ。


「さてさて、ヴァンパイアが恋人となると大変だったろうな」


 そう言いながら祖父は食卓テーブルに着いた。


「おじいちゃん、おばあちゃんだって大変だったんだからね」

 『私だって大変だったんだから』なんて言いながら母親も席に着く。


 3人での会話を聞きながらこの後の会話がどうなるのかドキドキしてしょうがない夏菜子。


「とりあえず、何があったのか教えてごらん」


 おじいちゃんの言葉に甘えて、改めて椅子に座り今までのことをゆっくりと話し始めた。



* * * * * *



「と言う感じで、一緒に居られる時間が凄く減ってしまって……」


 夏菜子がひとしきり説明した後で祖父は大きく頷きながら言葉を返した。


「そりゃあ、藍くんにとっては地獄のような時間だっただろうなあ。

 好きな人の近くに居られないなんて、悲しすぎるからなぁ」


 祖父は自分がヴァンパイアだということもあって、同調できるものがあるようだ。


「おじいちゃんもおばあちゃんにたくさん……あの、き、キスをしたの?」


 恥ずかしかったが、ヴァンパイアについて知る良いきっかけだと思い、思い切って聞いてみた。


「そりゃあ大変だったわよ」


 答えたのは母親だった。


「毎日毎日目のやり場に困って、おばあちゃんも私の前ではなるべく近寄らせないようにしてたけど、まぁ、無理な話よね。

 夏菜子も覚悟した方がいいわよ」

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