一途な気持ちは止められない


「人のことを悪く言っちゃいけないよ」



 そういって、おでこにキスをする。



「私、お友達が出来たって、すごく嬉しかったんだ。

 でも、藍くんを横取りしようとしたって解って悲しくなってしまった……」


 図書室の机に突っ伏して哀しそうな声を出す夏菜子。


 落ち込む夏菜子に『それは違うよ』と藍は話始める。



「渡邉さんは俺に付き合ってくれなんて一言も言っていない」


「そうなの?」


 夏菜子は驚いて顔を上げた。


「単純に友達になりたかったんだと思う。ちょっと強引だったけどね」


「私も、本当の友達が欲しい。もう一度渡邉さんにカフェに行こうって誘ったら、返事してくれるかな?」


 自分のスマホを眺めながら夏菜子は言った。


 少しの間の間があって、藍は優しく笑った。


「夏菜子が誘うんだから、きっと戻って来てくれるよ」


 そっか。と夏菜子は呟いた。


 藍は本当に自分のことを好きでいてくれて、信頼してくれていて、魅力的だと思ってくれている。


 引っ込み思案の自分とサヨナラするにはいい機会かもしれない。


 失敗したっていい。もう一度渡邉さんをカフェにさそってみよう。

 今度は3人だけで。
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