エリート御曹司は“運命の番”に理性が効かない。
「なぜか、歩かなくてはいけない気がする。それに風に当たりたい」
浬は、運転手に止めるように言うとすぐに車は止まった。俺は止まると同時に車から降りる。歩くと言ったのに、早歩きになりなんでかどこに向かうのかわからないのに走り出す。
後ろから浬が「おいっ」と焦った声で後から走ってくるのがわかった。
目的地はないのに走り続けると甘い香りがだんだん強くなるのがわかる。そして駅が見える距離にフラフラとする女性が見えた。
「……っ……」
誰なのか知るわけないのに、なぜか彼女を連れ去りたくなる。理性なんて、少し突いたら壊れそうだ。
「この、感覚……は」
昔、熱を出した時に感じたあの感覚と似ていた。だから、彼女が知りたくて近づく。近づくと動悸が激しくなっていった。