エリート御曹司は“運命の番”に理性が効かない。
***
「……なんでこんなに豪華なの?」
志野谷さんは入ってくるなり私を抱き抱え、大きな食堂のような場所に連れてかれた。テーブルのある場所まで行き椅子に座らせた。
……とても過保護だ。
「好みがわからなかったから、色々作らせたんだ。無理には食べなくていい、食べたいものを食べて」
「あ、はい……いただきます」
テーブルには、たくさんの小皿に白米に玄米、一口サイズのクロワッサンにロールパン、可愛いサイズのフレンチトーストが並べられた。それに和食のおかずが小皿に盛られていて和と洋の朝食だ。
「……おいしいか?」
「はいっ、とても。今までの食事で一番美味しいです」
「そうか、それはよかった。和と洋、どっちが好み?」
「どちらも好きです。とても美味しかったから」
本当に美味しい。それに、誰かと食卓を囲むなんて何年振りなんだろうか……
私は小さな頃に両親が亡くなって、それからというものの親戚のお家を転々として今思えばたらい回しされていたんだろう。そんな環境だったからこんなふうに負の感情以外を向けられるなんて嬉しくて幸せな気持ちになった。
「ありがとうございます。志野谷さん」
「これくらい当然だ」
そう志野谷さんは言って微笑んでくれた。