エリート御曹司は“運命の番”に理性が効かない。
「そんなことはありません。私は、島田チーフと働けることがとても嬉しいです」
「面接でもそんなこと言ってたわね、嬉しいけど」
島田チーフこと、島田寧々さんは私がこの世界に飛び込んだきっかけをくれた人だ。
私は大学時代、まぁ適当にいい会社に入って平々凡々に生きていければそれでいいなぁって思っていた。だけど、大学三年生になった時に友人と行った百貨店で化粧品メーカーが主催のイベントをしていてその時にメイクをしてもらった。
いつもはナチュラルメイクの私だったけど可愛く華やかに施してもらってときめいた。心が躍った。それから私はメイクに夢中になって、その時に出会ったのは島田さんだったのだ。だから私は人生を変えてもらったんだと思っている。
「島田さん、私、頑張りますね!」
「うん、がんばれ。じゃあ、今からは商品陳列しよっか。それで、時間が来たら上がっていいからね」
「はい、わかりました」
私は店の奥から商品が入った段ボールを店内に運ぶと、商品を丁寧に陳列していった。
何回か裏と店内を行き来して夢中で並べていると「葉月さん」と声をかけられる。
「もう時間だし、上がっていいわよ」
「あっ、はい。お疲れ様です!」
私は島田チーフに挨拶をして近くにいた人にも挨拶をすると、店員専用の更衣室に向かった。