赤と黒に溶ける
赤と黒に溶ける

「赤色だよ。絶対に赤。赤のやつじゃなきゃ、いやだからね」

 ヨーヨー釣りのビニールプールに白いこよりを垂らす(ゆう)くんの横で、紺色の浴衣の袖を揺らしながら、何度も念を押す。

 そうしたら、ものすごく煩わしそうな目で佑くんに睨まれた。

「うるせー、わかってるよ。集中できねーから、ちょっと黙れ」

 低い声で怒られた私が黙ると、ビニールプールに視線を戻した佑くんの横顔が、見惚れるほどに真剣になる。

 今日は、おばあちゃんの家の近所の大きな神社で行われる夏祭り。

 二日に渡って行われるお祭りは、地元では結構有名で。    

 みっつ年上の従兄の佑くんと一緒にお祭りに行くのが、小さな頃からの毎年の夏休みの楽しみ。

 だけど今年は、私も中学1年生。佑くんは高校1年生。

 さすがにもう、一緒に夏祭りなんて行ってくれないだろうな、って思ってたら……。
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