エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
『カガヤ、きみのヤマトナデシコもスシは握れるのかい?』

ヴァローリに尋ねられ、俺は笑顔で答えた。

『スシは自宅で食べるものではなく、店で職人が握るものなんです。妻の得意料理は……』
『煮魚と唐揚げです。ご存じですか? ヴァローリ先生』

菊乃があとを引き取って喋った。彼女はイタリア語を日常会話程度に習得している。たどたどしく聞こえたのは、緊張していたからだろう。

『唐揚げ、聞いたことがある。フライドチキンの種類だろう』
『ええ、似ています。スパイスとお醤油で下味をつけて、カラッと二度揚げするとおいしいんですよ』

先ほどより流暢なイタリア語に、ヴァローリが目をみはった。思ったよりも会話になったと思っているのだろう。

『ぜひ、食べてみたいな。カガヤ、フードワゴンが出るんだろう。唐揚げはあるだろうか』
『先生がそうおっしゃるなら、なくても用意いたしますよ』

会食は菊乃のおかげもあって、和やかに進んだ。
菊乃は契約上、俺の役に立つのが一番の仕事だと思っている。そんなに気張らなくていいと言っているけれど、今回の活躍はおおいに菊乃に感謝をしよう。きっと彼女も喜ぶはずだ。

会食も終盤、席をはずしたヴァローリをそれとなく追いかけた。世間話ばかりで、彼自身の思想や現政権に対する考えなど政治的な話はしていない。もしふたりになるチャンスがあれば、それとなく尋ねてみよう。あとは、あまりに好人物過ぎて、裏の顔があるなら知りたくなってきたといったところか。
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