エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
ヴァローリはリストランテ内の喫煙可能な中庭のテラスに出て葉巻をふかしていた。横には秘書と本件の担当者がいる。これはふたりで話はできなそうだと思いつつ、柱と木の陰に身を潜めた。内緒話があるなら聞いておこう。

『面白くない連中だな』

ヴァローリは先ほどの親しみやすい笑顔はどこへやら、陰険な顔つきでぶつぶつ文句を垂れ始めた。所謂アジア系への差別の用語を連発し、実績になるから仕方なく顔を出してやったと強調している。
本件の担当者は俺とやりとりしている男性だが、差別的な人間ではない。ヴァローリの機嫌をうかがいつつ、来てくれた礼を何度も述べている。
なるほど、なんともわかりやすい裏の顔。日本人のいないところで好き勝手言っているのだから、やはりこういう男だったようだ。

すると、ヴァローリの元に見知らぬ男が近づいてきた。音もなく現れたので、驚いたくらいだ。風体を見ると秘書のようにも見えるが、こちらがリストアップしたヴァローリ周辺の人物ではない。当然、今日の会食にも参加していない。

『きみは下がってくれ』

担当者をテラスから追い出すと、ヴァローリは秘書ともうひとりと、書類とタブレット端末を口語に見ながら話している。

『ルース島の件です。品はまとまりました』
『期日は』
『運搬ルートと日程はこれです。当座、市街の倉庫に入れます』

何やら物流の話をしている。男に南イタリア方面の訛りがあると感じたが、もっと気になったのはルース島という単語だ。シチリア島近くの小島で、島全体をマフィアが根城にしていると聞く。少なくともヴァローリのような議員に用事のあるところではない。
もしかしてヴァローリにはさらなる顔があるのかもしれない。
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