エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
現政権に批判的で、次なる首相は自分の派閥から駒になりうる人材を出したいと考えている。それだけの男ではないのかもしれない。
『倉庫は第二の方にしろ。手入れが入ったばかりで当分は安全だ』
『わかりました』
(運搬……何かをローマ近郊に運び込んでいるのか。手入れというのも気になる)
麻薬か、武器か。どちらにしろ、俺の仕事は推測抜きで今得た情報を日本へ報告するだけ。情報の精査は上の仕事であり、その情報をどこにもたらせばいいかも上が考えることだ。
彼らに見とがめられる前に、そろそろ戻らなければならない。あとから来た男だけ方言や顔の特徴を覚え、そっとテラスを離れた。
会食が終わり、リストランテの門扉でヴァローリを見送る。その時だ。菊乃が小走りに駆けていき、ヴァローリの秘書に何かを手渡した。ヴァローリが車に乗る瞬間だったので、多くの人間が菊乃と秘書の方は見ていなかった。しかし、秘書が顔色を変えたのが俺には見えた。
菊乃は何を渡したのだろう。
妙な胸騒ぎから、車が行ってしまうとすぐに俺は菊乃を呼んだ。手を引き、玄関脇のランプの下で彼女を見下ろす。
「さっき、ヴァローリ議員の秘書に、何か渡したね? あれは?」
「メモです。別の秘書さんが、落としたので」
「別の秘書?」
「会食中にトイレに行ったときに、ヴァローリ議員がふたりの秘書さんと廊下を歩いていたのが見えたんです。トイレから戻ろうとしたら、会食に参加されていない秘書さんがちょうどリストランテを出るタイミングで、ポケットからメモが。追いかけたんですけど間に合いませんでした」
それでもうひとりの秘書にそのメモを渡したというわけか。俺は嫌な予感を覚えた。自然と眉間にしわが寄る。
『倉庫は第二の方にしろ。手入れが入ったばかりで当分は安全だ』
『わかりました』
(運搬……何かをローマ近郊に運び込んでいるのか。手入れというのも気になる)
麻薬か、武器か。どちらにしろ、俺の仕事は推測抜きで今得た情報を日本へ報告するだけ。情報の精査は上の仕事であり、その情報をどこにもたらせばいいかも上が考えることだ。
彼らに見とがめられる前に、そろそろ戻らなければならない。あとから来た男だけ方言や顔の特徴を覚え、そっとテラスを離れた。
会食が終わり、リストランテの門扉でヴァローリを見送る。その時だ。菊乃が小走りに駆けていき、ヴァローリの秘書に何かを手渡した。ヴァローリが車に乗る瞬間だったので、多くの人間が菊乃と秘書の方は見ていなかった。しかし、秘書が顔色を変えたのが俺には見えた。
菊乃は何を渡したのだろう。
妙な胸騒ぎから、車が行ってしまうとすぐに俺は菊乃を呼んだ。手を引き、玄関脇のランプの下で彼女を見下ろす。
「さっき、ヴァローリ議員の秘書に、何か渡したね? あれは?」
「メモです。別の秘書さんが、落としたので」
「別の秘書?」
「会食中にトイレに行ったときに、ヴァローリ議員がふたりの秘書さんと廊下を歩いていたのが見えたんです。トイレから戻ろうとしたら、会食に参加されていない秘書さんがちょうどリストランテを出るタイミングで、ポケットからメモが。追いかけたんですけど間に合いませんでした」
それでもうひとりの秘書にそのメモを渡したというわけか。俺は嫌な予感を覚えた。自然と眉間にしわが寄る。