エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
三月も終わりが近づくその日は、いつもと変わらない日だった。私は早番で昼の店舗勤務を終え、本社で定時まで書類を作って終わりというスケジュール。

「菊乃、ちょっとこっちにこい」

伯父に呼ばれたときも、別段不審にも思わなかった。社長室に入ると、伯父と伯母、正さんがそろっていた。さらに総務の佐々木部長と経理の川崎課長がいる。この時点で何かあったのかな、とは思った。

「菊乃、おまえはここに呼ばれたことにたいして何か心当たりはあるか?」
「え? ……心当たりですか?」
「あるなら、俺が口にする前に言え」

伯父の表情は硬く、普段より口調は高圧的だった。もしかして、私が何かをしたのだろうか。ようやく私の頭もめまぐるしく回転し始める。しかし、どう考えても心当たりはない。

「わかりません。なんのご用事ですか」
「菊乃、これを見なさい」

伯母が差し出してきたのは手書きの領収書だ。品代と書かれてあり、金額は20万円。同じような金額の領収書が五枚ある。商品はわからないが、買った場所はバラエティショップのようだ。

「領収書ですか?」
「あんたが経理に出したんでしょう」

もう一枚の用紙は経理に経費申請をする際の書類である。マルナカ弁当ではこういった書類は各部署のフォーマットがあり、そこに詳細を打ち込んでプリントアウトして提出というスタイルを取る。ネット環境の整備が進んでいないため、書類保存は紙が多い。

「あんたのパソコンに、この書類の大元が残っていたよ」
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