エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
博已さんはドアを閉め、私に近づく。手を伸ばせば触れ合える距離で向かい合う。

「菊乃、どうか誰のものにもならないでほしい。俺が任務を終えて帰国するまでの間」

その意味を測りかねている私の腕を博已さんがつかんだ。視線が交わる。彼は今までに見たことがないほど切ない表情をしていた。

「きみを諦められない」
「博已さん……?」
「だまし討ちみたいに連れてきて不信感を与え、ともにこの国にいられないと判断させたのは俺自身の責任だ。きみが日本に帰るのは、当然の権利だ。だけど……」

私の腕をつかんだ大きな手は震えていた。綺麗な瞳が切なく細められる。

「もう一度チャンスがほしい。きみに信じてもらえるよう、愛してもらえるよう、努力する。失った信頼を回復するためならなんでもする。菊乃、きみが好きだ。俺は絶対にきみを諦めない」

驚いた。この人は、私に自分の仕事を黙っていたことを悔いているのだ。私の信頼を失ったと思っているのだ。
私に呆れたり、がっかりしたりしているわけじゃない。
私を愛しているから、日本に返してやりたいと……。

「三年、私を日本で待たせるということですか?」
「そうなる。待っていてほしいなんておこがましいな。だけど……」
「嫌です! 三年も待てない!」

叫ぶなり私は博已さんの腕の中に飛び込んだ。

「離れたくない。私だって、博已さんが好きだから。三年も離れたら息ができない」

大好き。博已さんが大好き。
気持ちがあふれて苦しい。
「菊乃……嘘だ……そんな」
「嘘じゃないです。私は博已さんを愛してます。だけど、私がお仕事を邪魔してしまったし、このままじゃあなたのお荷物にしかならないと思ったから日本に帰ろうと……」

言葉とともに涙がこぼれた。言うことはないと思っていた気持ちを直接博已さんに伝えられた。彼が私を想ってくれているなら、伝えたかった。
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