エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
それから数日後、私と博已さんは鉄道に乗り、サレルノを目指していた。ローマのテルミニ駅からサレルノまでは高速鉄道で二時間と少し。
この急な旅行は博已さんが休暇を取り手配してくれた。

『少しローマから離れよう』

博已さんが堂島さんらと相談して決めたそうだ。私が見たメモは、やはりそれなりの機密事項を含んでいるようで、ローマにいては当分ひとりで出歩くこともできない。また、こちらが監視などを意識していないように振舞うためにも、夫婦でのんきに旅行に行くのもいいだろうとのことだった。
和太鼓のイベントを目前に控えているのに、私のために申し訳ない。しかし博已さんは『休めるときに休んでおくものだ』と余裕の表情だった。

高速電車は快適で、あっという間にサレルノに到着した。サレルノもティレニア海に面した魅力的な街だが、今日の目的地はサレルノではなく、そこからバスで向かうアマルフィだ。有名な海辺の観光都市で、私も名前は聞いたことがあった。建築物もビーチも美しい街だそうだ。
鉄道が通っていないので、サレルノからバスに乗った。バスはかなり混みあっていた。狭いジグザグの道を曲がる度に景気よくクラクションを鳴らすので、結構驚く。道のりは一時間少々と聞いていたけれど、出発時刻が遅れたため、アマルフィの到着も遅れた。

「時間に縛られない旅行だから、こういうのもいいな」

博已さんはあまり気にしていない様子で言い、私を見る。

「疲れてしまったか?」
「バスは少し。でも、この景色を見ると疲れも吹っ飛んじゃいますね」
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