エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
「いえ、本当に心当たりがないです」

私は首を振った。パソコンにそんな書類があったなんて知らない。パソコン自体にパスワードをかけてあるから、簡単には開けないはずなのに。

「店に行ってその時のレシートを出し直してもらったわよ。子どもが買うようなカードゲームパックを箱ごと何個も買ったそうじゃない」
「知りません」

なんの話かまったくわからない。なぜ、私がカードゲームのおもちゃを大量にほしがるというのだろう。なぜ経費で買ったことになっているのだろう。

「転売したんだろ。このカード、プレミアカードが絶対入ってるヤツだ。ネットで売れば、何倍もの金額であっという間に売れる」

正さんが呆れたようにため息をついて、私を指さした。

「会社の経費を使って小銭稼ぎとは、恩をあだで返しやがって」
「私、そんなことはしてません!」

はっきりと弁明の言葉を口にする。本当にわからないのだ。

「小枝さん」

経理の川崎課長が差し出してきたのは一枚のメモだ。それは私がよく使っている小鳥の絵柄のついたメモパッド。「経費申請書類です。よろしくお願いします。小枝」という文字は私の筆跡だった。
しかし書いた覚えがまったくない。

「この領収書と一緒にクリップで留められていた。きみの字に見える」

書類と一緒にこういったメモをつけるのはよくあることで、総務も経理も私の字を見慣れているだろう。

「菊乃のパソコンに書類の大元があって、書類につけられていたメモはあんたの書いた字。まだ言い逃れできるつもりでいるの?」

伯母が怒りに満ちた声で追及し、伯父が低い声で尋ねた。

「菊乃、本当におまえが使い込みをしたのか?」
「していません!」
< 12 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop