エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
二日後、菊乃は大使夫人とのランチに出かけていった。職員の伊藤が送り迎えをしてくれたので、菊乃の安全については問題ないだろう。
大使夫人と近くのリストランテに出かけ、戻ってきた菊乃はマンションに戻る前に、俺のオフィスに顔を出した。
職員たちに挨拶をしながら、俺の元へやってくる。
「楽しかったかい?」
「ええ、奥様に楽しいお話をたくさん聞かせていただきました。それとイタリア語を褒めていただきました」
大使夫人の気遣いで、いい時間を過ごせたようでホッとする。あとで、改めて御礼をいわなければと思いつつ、菊乃の表情が硬いことに気づいた。
「玄関まで送る」
そう言って、オフィスを出てから声をひそめて尋ねた。
「何かあったか?」
「たいしたことではないんですけれど、リストランテで知らない男性に話しかけられました」
菊乃はおずおずと答える。
「奥様がお手洗いに行っているとき、私がひとりでテーブルにいたんですけれど、知らない男性が『やあ、きみの名前は? 日本大使館に勤めてるの?』って」
大使夫人の顔を知っていて、そんな声かけをしたのだろうか。イタリア人は陽気で会話が好きな人間が多いが、その状況で菊乃に話しかける理由がわからない。
「それで菊乃は?」
「黙っていました。答えないほうがいい気がしたので。そうしたら言われました。『この国に長くいたいなら、黙ってニコニコしていればいい。日本人は得意だろう』って」
それは先日のメモの事件を踏まえた明らかな脅しだ。菊乃が見た内容を、誰にも話さない方がいいという意味の。やはり、相手側は菊乃が重要な内容を知ってしまったと考えているのだ。
大使夫人と近くのリストランテに出かけ、戻ってきた菊乃はマンションに戻る前に、俺のオフィスに顔を出した。
職員たちに挨拶をしながら、俺の元へやってくる。
「楽しかったかい?」
「ええ、奥様に楽しいお話をたくさん聞かせていただきました。それとイタリア語を褒めていただきました」
大使夫人の気遣いで、いい時間を過ごせたようでホッとする。あとで、改めて御礼をいわなければと思いつつ、菊乃の表情が硬いことに気づいた。
「玄関まで送る」
そう言って、オフィスを出てから声をひそめて尋ねた。
「何かあったか?」
「たいしたことではないんですけれど、リストランテで知らない男性に話しかけられました」
菊乃はおずおずと答える。
「奥様がお手洗いに行っているとき、私がひとりでテーブルにいたんですけれど、知らない男性が『やあ、きみの名前は? 日本大使館に勤めてるの?』って」
大使夫人の顔を知っていて、そんな声かけをしたのだろうか。イタリア人は陽気で会話が好きな人間が多いが、その状況で菊乃に話しかける理由がわからない。
「それで菊乃は?」
「黙っていました。答えないほうがいい気がしたので。そうしたら言われました。『この国に長くいたいなら、黙ってニコニコしていればいい。日本人は得意だろう』って」
それは先日のメモの事件を踏まえた明らかな脅しだ。菊乃が見た内容を、誰にも話さない方がいいという意味の。やはり、相手側は菊乃が重要な内容を知ってしまったと考えているのだ。