エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
断言できる。私はそんなことしていない。
書類は私のパソコンのパスワードがわかれば作れる。管理は総務の田澤さんという男性がしているはず。彼からパスワードを聞き出し、私がいない隙にパソコンを使えば可能だ。
メモは私の筆跡を真似たか古いメモを取っておいて流用すればいい。

「私はそんな泥棒のようなことはしません。調べてもらっても構わないです。警察を呼んで調べてください。」

総額は百万円程度。警察に被害届を出せばいい。この営業所には監視カメラもないけれど、購入したバラエティショップにはあるだろう。調べてもらえれば、私が購入していないとわかる。

「おいおいおい、馬鹿か、菊乃。親父もおふくろもおまえが正直に話せば、通報せずに許すって考えてるんだぞ」

正さんが嘲笑めいた声音で言った。

「若いうちから勉強と労働ばかりで楽しいことも知らないおまえだ。魔が差すってこともあるだろ。懐が広い親父たちは、姪っ子の将来を思ってここだけの話にしてやろうって言ってるんじゃないか。それを自分から警察沙汰にするなんて、頭が悪すぎるだろ」

見下した顔で私を糾弾する正さんを見て、すっかり理解した。
警察沙汰にされて困るのはこの人だ。そして、彼がどうして私の仕事に手出ししていたのかもわかった。私の筆跡を盗むためだ。隙を伺うためだ。
おそらく田澤さんを丸め込んでパスワードも盗んでいる。気の弱い田澤さんは以前から正さんに逆らえていない。正さんひとりハイスペックなパソコンをセッティングしてもらっていて、彼がそれをゲーミングパソコンとして私物化しているのは社内の誰もが知っているのだ。
< 13 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop