エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
『外交官の妻が消えたら、国際問題よ。わかってるの?』

スロープ付きの階段を降りさせられ半地下になった出口にやってくる。こんな裏口があったのか。開け放たれたドアの向こう、宵闇の中に機材搬入などのトラックが数台停まっている。
すると、ドアから男がひとり入ってきた。間違いない。この前、リストランテで私に声をかけてきた男だ。

『何も言わなくていいと言ったのに』

男が馬鹿にしたように笑う。怯えそうになる心を必死に叱咤して、私は男に向かって言った。

『私が何を誰に話したというの?』

実際に私はほとんどメモの内容を読めていない。しかし、この弁明が役に立つとも思っていない。

『私をどうするつもり? 殺すの?』
『おまえが気にすることじゃないよ』

語尾に侮蔑の言葉をつけて言う。背後の女が答えた。

『安心しな。イタリア男と恋仲になって駆け落ちしたってことにしてやるから』

この連中は本気で私を拉致しようとしている。
ヴァローリの疑いが晴れるまで監禁されるとか……。
いや、そんな生ぬるい話ではないだろう。殺されてしまうかもしれない。

だけど、そうしたら博巳さんはどうなるの? 
彼も命を狙われる? それとも安全のために日本に帰国させられる?

博巳さんは私を救出するために死に物狂いになるだろう。
だけど国際問題になるのを回避するために、日本側が私を切り捨てる道を選んだら……。あり得ないとは言えないし、おそらく日本政府が動く頃、とっくに私の命はないだろう。
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