エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
菊乃と待ち合わせたのはクリスマスムードの夜のローマを歩こうというささやかなデートのためだった。
しんと冷えた夜の空気の中を菊乃と腕を組んで歩く。オレンジ色のイルミネーションが歴史ある街をあたたかな色で染める。美しい光景だった。
この時期はまだ観光客が結構いて、ローマの街中は賑わっている。ナターレ本番になると、店はあちこち閉まり、リストランテもクリスマスメニューオンリーになったりと観光には不向きになるそうだ。

「博已さん、なんだかずっと考え事してる?」

そう言われ、慌てて彼女の顔を見下ろした。隣の彼女は俺を見上げ、ふふっといたずらっぽく微笑む。

「そんなつもりはなかったけれど……変だったか?」
「変じゃないですよ。でも、博已さん、結構顔に出るからなあ。悩みがあったら言ってほしいって思っただけ」
「顔に出るなんて、きみ以外に言われたことがないよ。本当に」
「前も言ったでしょう。お弁当屋さんのお客さんだった頃から、博已さんは割と感情豊かです」

それは菊乃が他人の感情を読み取る力に優れているからではないだろうか。それとも、当時から俺をよく気にしてみていてくれたということか……。

いきなり妊娠出産のことを切り出すのも気が引けて、俺はごまかすために言った。

「結婚式のきみのドレスのことを考えていた。白いウエディングドレスだけでいいと言うけれど、カラードレスや着物も着た方がご両親は喜ぶんじゃないかと……」
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