エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
俺はその女性の胸元にあるプレートの名前を見た。『丸中』……この女性、マルナカ弁当の社員で、家族経営なら中枢にいる人じゃないか?
「あの! 実は、私、彼女に非常に親切にしてもらったことがあり、直接御礼を言いたいのですが」
「はい?」
「彼女にどうしても会いたいんですが。……もう店舗に来ることはありませんか?」
我ながら無茶を言っていると思った。他のアルバイト店員がいる前で、彼女に自分の仕事のことを打ち明けられなかった俺が、店内の客もアルバイトも気にせず社員とみられる女性に詰め寄っているのだから。
「もう辞めましたから。そういったことを言われましても」
「そこをなんとか」
「存じ上げません」
六十代の女性は険しい顔をして、俺を胡散臭い相手として睨みつけている。聞き出すのは無理そうだ。
どうしよう。こんな日が来るのは想像できたのだ。俺が転勤するより先に、彼女が俺の前から消えてしまうという未来。
だって、俺たちをつなぐのは弁当だけだったのだ。
唐揚げパックを鞄にしまい、俺はとぼとぼと店舗を出た。
虚しさとやるせなさでいっぱいだった。こんなことになるなら伝えておけばよかった。
何を……?
俺の気持ちを……
俺の感情はやっぱり恋だった。まぎれもない恋だったのだ。
それなのに、臆しているうちに手から滑り落ちてしまった。もう、彼女に会う術はない。
「お客様……!」
呼ぶ声に振り向くと、店舗の裏口から小走りでやってくるアルバイト店員の姿が見えた。よく顔を合わせる店員の女性だ。胸のプレートに『清原』と苗字が見える。
「小枝店長、今なら本社にいると思います!」
「あの! 実は、私、彼女に非常に親切にしてもらったことがあり、直接御礼を言いたいのですが」
「はい?」
「彼女にどうしても会いたいんですが。……もう店舗に来ることはありませんか?」
我ながら無茶を言っていると思った。他のアルバイト店員がいる前で、彼女に自分の仕事のことを打ち明けられなかった俺が、店内の客もアルバイトも気にせず社員とみられる女性に詰め寄っているのだから。
「もう辞めましたから。そういったことを言われましても」
「そこをなんとか」
「存じ上げません」
六十代の女性は険しい顔をして、俺を胡散臭い相手として睨みつけている。聞き出すのは無理そうだ。
どうしよう。こんな日が来るのは想像できたのだ。俺が転勤するより先に、彼女が俺の前から消えてしまうという未来。
だって、俺たちをつなぐのは弁当だけだったのだ。
唐揚げパックを鞄にしまい、俺はとぼとぼと店舗を出た。
虚しさとやるせなさでいっぱいだった。こんなことになるなら伝えておけばよかった。
何を……?
俺の気持ちを……
俺の感情はやっぱり恋だった。まぎれもない恋だったのだ。
それなのに、臆しているうちに手から滑り落ちてしまった。もう、彼女に会う術はない。
「お客様……!」
呼ぶ声に振り向くと、店舗の裏口から小走りでやってくるアルバイト店員の姿が見えた。よく顔を合わせる店員の女性だ。胸のプレートに『清原』と苗字が見える。
「小枝店長、今なら本社にいると思います!」