エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
「え? あの」
「今日、この時間に本社で退職手続きの書類を書いて、荷物を引き上げる予定だって言ってました! 浅草の本社に行けば会えると思います」

アルバイトの子は、俺がレジの女性に食い下がっていたのを確かに見ていた。そして、俺が常連で彼女とよく話していたのを見ていたのだろう。

「あの……教えていただきありがとうございます」
「いえ! 小枝店長、お客様がいらっしゃると嬉しそうにしていたので、きっと最後に会えたら喜びます!」

それは……いや、期待するな。
俺は若いアルバイト店員に頭を下げ、すぐにタクシーを拾った。調べた住所に向かって車を飛ばしてもらう。


十九時過ぎ、浅草のビル兼工場近くに到着した俺は、ここまで来てどうしたらいいか迷った。出待ちをすべきだろうか。しかし、もうビルを出た後なら周辺を探すべきだろうか。
他の社員を捕まえて彼女の家を聞く……本当にストーカーになってしまうからそれは駄目だ。
しかし、ビルの入り口が見えたときに、そこから出てくる女性の姿を見つけた。
彼女だ。小枝さんだ。会えたことで胸がいっぱいになる。

「小枝さん」

俺は迷うことなく呼びかけた。
ここでこのチャンスを逃したら、俺はもう彼女を失うしかないのだ。



*****




「驚かせて申し訳ありません」

浅草の住宅地、わずかにある緑地のベンチに並んで座り、俺は勢いから出たプロポーズを謝罪した。
横には小枝さん。彼女は心底驚いた様子で、それでも逃げ出さずに俺の横にいる。
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