エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
「浪費になんてなりません。二十八歳なんてまだまだなんでもできますし、なにより憧れの海外生活ですから」

それに、と私は言葉を切り、思い切って言った。

「博已さんは私たち店員にとっても格好いい素敵な人だったんですよ。いかにもお仕事ができそうなクールな佇まいで。そんな方の相棒に選ばれたなんて光栄です」

博已さんは言葉に詰まり、それからひっそりと「そうか」とつぶやいた。
主語はぼやかしたけれど、格好いいとか素敵とか、言いすぎてしまっただろうか。仕事として結婚するのだから、重い女だとは思われたくない。

「人生の大ピンチを救ってくれた御恩、しっかり返しますからね」
「ありがとう。そんなに気負わなくていいよ」

それから彼は言葉を選んでいるように少し黙った。

「俺は……あまり感情表現がうまくない。きみを不安な気持ちにさせたり、嫌な思いをさせてしまうこともあるだろう。そういったときは遠慮せずに言ってほしい」
「そうですか?」

私が見る限り、店舗で会う彼は控えめだけれど優しさと誠実さを見せてくれていた。だから、私も惹かれたのだけれど。

「あまり表情がないとも言われる」
「日替わり弁当が好きなメニューだと少し嬉しそうでしたよ」

私の言葉に、博已さんがぶっとふきだした。水を飲んだタイミングだったのもよくなかったようだ。
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