エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
「よく見てるな、きみは」
「お客様ですから。これからは旦那様としてよく観察します」

ほら、今も照れたような、困ったような顔。この人のこういった顔は、店員とお客さんのままじゃ見ることはできなかったのだろうなと思った。

「あの、一応。これは本当に一応なんだが」
「なんですか?」

食事のパックをシンクで流し分別していると、お茶の用意をしている博已さんが再び口を開いた。

「この結婚はきみにとって仕事だ。それにつけ込んで、妙なことをするつもりはないから。……安心してほしい」
「妙なこと……」

繰り返して呟いて、ぶわっと顔が熱くなった。つまり男女の関係とか……そんな意味だ。

「わ、だ、大丈夫です! 博已さんを信用していますし! そもそも私みたいな子どもじゃ、えっとそんな気にはきっと……」

博已さんはこちらを見ない。髪を掻く仕草をし、それからぼそっと答える声。

「きみは充分素敵な女性だ。だからこそ、きみが不安に思ったり、嫌な気分になったりするような行動はしないよう気を付ける」

素敵な女性って、それは本当に私のこと? おそらく気遣いで言ってくれているのだろうけれど、嬉しくて頭がふわふわしてしまう。

「あ、ありがとうございます! 私も変なこと、しませんから!」

信頼してほしいという意味の言葉は、なんだか妙な返しになってしまった。
こうして私たちの不思議な新婚生活が始まったのだった。

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