エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
「菊乃、今日の夕飯、提案があるんだけれど」

その日、朝食のときに博已さんが言った。私が用意したトーストにスクランブルエッグ、カフェオレというメニューを食べながらだ。

「今日の夕飯はマルナカ弁当に買いに行かないか? ふたりで」
「ふたりでうちの……いえ、私の元職場の弁当を? いいですけど、どうしてですか?」

私の職場だったマルナカ弁当日比谷公園前店は、このマンションからもかなり近い。買い物などのときは意識して近づかないようにはしていたのだけれど。

「やはりいい気分はしないか。本意ではなく辞めた職場だものな」
「いいえ。店は……店のアルバイトの子たちや、工場のパート社員たちには思い入れがありますから。問題ないですよ」

考えてみたら、博已さんはずっとマルナカ弁当の常連だった。週に何度も食べてくれていた。それが今は私が三食作るから買いにいく理由がなくなってしまったのだ。

「うちのお弁当、自慢になっちゃいますけど、美味しいですもん。博已さんが食べたいって思ってくれたら嬉しいです」
「いや、それもそうなんだけど、その……清原さんというアルバイトスタッフは今日いると思うかい?」

清原さんの名前が出て驚いた。彼女の可愛い顔がぱっと浮かぶ。

「え、あの、清原さんに会いたいですか?」

思わず反射で聞いてしまった。すると、博已さんが慌てたように言った。

「誤解しないでほしい。変な意味じゃないんだ。ええと、きみに会って結婚を申し込んだあの日、彼女にお世話になってるんだよ」

どういう意味だろう。首をかしげる私に博已さんは説明する。
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