エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
その晩、予定通り博已さんと待ち合わせた私は並んで元職場にやってきた。
清原さんには夜に客としていくとだけ伝えてある。

「あのぉ、博已さん」

私は並んで歩きながら博已さんを見上げる。

「結婚の話、清原さんにした方がいいですよね」

博已さんは少し黙って、頷いた。

「俺としては、きみを妻にするのは本当のことなので……」

そこで言い淀む彼は、どう考えているのだろう。契約結婚とはいえ、結婚自体は公的な関係だ。清原さんにお礼を言うときに言わないのは変である。

「菊乃が親しい同僚に言いたくないのなら、俺ひとりで行ってくるから、公園で待っていてほしい」
「いえ、言いたくないなんて思ってませんよ。でも」
「でも?」
「私と博已さん、釣り合っているように見えないじゃないですか」

博已さんには意味が伝わっていないようだけれど、私はすごく感じる。博已さんは本当に格好良くて素敵な人だ。それが十歳も若くてちんちくりんで地味な私が隣にいて「結婚します」なんて、どう考えてもおかしいでしょう。しかも、元職場の同僚は、私たちの関係性が店員と客だったことも知っているのだ。

「確かに俺は……菊乃の夫としては年が上だからな。おじさんが若い女性をたぶらかしたように見えるかもしれない」

博已さんが思案げな顔で言う。全然違う勘違いをしているようだ。

「違いますよ。地味でブスな店長がイケメンのお客さんを捕まえたなんて、バイトの子たちが驚いちゃうって話です」
「菊乃が地味でブスなわけがないだろう」

博已さんの口調は少し強かった。すぐにその語気を恥じるように、低い声で付け足す。

「菊乃は可愛い。俺にはもったいないくらいだ」
「わー! 無理して褒めなくていいです!」

なんだか変な空気になってしまって、私はあわてた。この前も卑屈な言動をしてしまい、無理して褒めさせてしまったのだ。言動には気をつけないと。
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