エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
長野の俺の実家を訪ねた翌日は日曜だった。
昨日の旅行の疲れもあるだろうから、朝はゆっくりにしようと菊乃には話してある。甲斐甲斐しく食事を用意してくれる菊乃には感謝しているが、家事を義務だと思ってほしくないのだ。先週から語学講習も始まっていて、菊乃も忙しい。
朝が弱い俺はたっぷり惰眠をむさぼり、十時頃にベッドを出た。寝室とリビングはドアひとつ隔てた間取りである。ドアを開けると、ダイニングテーブルには朝食の準備がしてある。

「博已さん、おはようございます。今日は朝昼兼用でブランチにするのはいかがでしょう」

菊乃が笑顔で声をかけてきた。半袖の白いワンピース姿は、まぶしいくらい愛らしい。

「おはよう、菊乃。準備してくれてありがとう」
「これから、スープをあたためてフレンチトーストを焼くんです」

そう言ってから、菊乃がててっと駆け寄ってきた。
パジャマ姿の俺の前に立ち、熱心に見上げてくる。

「菊乃?」
「日課を!……済ませにきました!」

一瞬、なんのことかわからなかった。次に、昨日約束したばかりのハグと握手の件だと思いいたる。そうなると、俺の心臓は俄然動きを速めた。
朝の男性の生理反応が収まってから部屋を出たのはよかったが、朝からハグではぶり返してしまいそうだ。
しかし、今断ったら菊乃は臆してしまうだろう。今も覚悟を決めたという顔でやってきているのだ。
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