エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
外務省国際情報統括官組織第五国際情報官室では、今日も職員たちがせわしなく行き来している。
官僚という仕事は想像以上に地味な仕事である。あちらとこちらの調整。あちらの情報をこちらに流す。こちらの依頼を精査して管轄部署に回す。
年若い職員は省内を一日中駆け回っていることもあるし、年功序列で役職についても大臣の会見や答弁のために徹夜で仕事をすることだってある。外事で問題が起これば夜中に緊急参集もあり得る。
俺の部署は名前通り海外にある日本大使館とのやりとりが多い。そして、俺のいる第五情報官室では、外交官として現地に赴き、直接現地の情報収集をする俺のような人間も多く在籍している。
イタリア行きは夏の終わり、単純計算であと三ヶ月後だ。省内のいつもの仕事の他に、語学研修の時間も組まれている。

「加賀谷、結婚おめでとう」

昼食の休憩をしていると、会議が終わった真野室長が声をかけてきた。
先日婚姻届を提出し、省内でも報告の書類を出した。

「婚約が決まったって聞いたときは驚いたけど、イタリア行きまでに結婚できてよかったな」
「ありがとうございます」
「愛妻弁当か? うらやましい限りだなぁ」

俺の目の前には菊乃が作ってくれた弁当が広げられている。週の半分以上マルナカ弁当をここで食べていた俺が、毎日愛妻弁当を持ってきているものだから、俺の結婚はあっという間にオフィス中に知られていた。

「料理上手な妻で助かります」
「以前はほとんど毎日近くの弁当屋だったのに。あの弁当屋も商売あがったりだな」
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