エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
菊乃に妙な心配をかけたくはないし、面倒事は伝えない。それは当初から決めていたことだ。
かけらでも危険を感じさせたくない。渡航を躊躇しそうになる情報はシャットアウトしておきたいというずるい気持ちも間違いなくあった。
菊乃は思いやりあふれる優しい性格だ。芯も強い。もし本当のことを話しても受け入れてくれるかもしれない。その上で、イタリアについてきてくれるかもしれない。
しかし、言わないで済むならそれが一番平和ではないだろうか。


午後の仕事中に電話がかかってきた。国際電話は日常だが、相手はイタリアの日本大使館の職員からだった。

「堂島さん、どうしました。そちら、まだ朝でしょう」
『よお、加賀谷。嫁さん連れでこっちにくるらしいじゃないか』

堂島さん防衛駐在官である。自衛隊からの出向職員で自衛隊の階級は一佐。一等書記官として昨年からイタリアに行っている。
イタリア行きが決まった時点で連絡はしたが、結婚することは伝えていなかった。大使館に送った俺と妻の情報から、電話をかけてきたのだろう。

「言い忘れました。先日、結婚をしまして」
『は~、堅物で面白くないおまえがねえ』

堂島さんとは俺が二十代の頃、スペインで一緒だった時期がある。こんなことを言っているが、誰より俺を可愛がってくれたのもこの人だ。
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