エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
夕暮れ時のオフィス街だ。人通りは多い。そんな中で、丸中正は偉そうに菊乃を貶める。このまま騒ぎ続けるようなら、警察を呼んだ方がいいかもしれない。菊乃はこの男に恨まれているのだから。

「菊乃を陥れておいて、自分の立場がなくなったら逆恨みとは、神経を疑う。あなたについては、素行についてまで俺の方で調べてあります。これ以上、菊乃を脅かすようなら、俺にも考えがありますよ」
「うるせえ! この女が東京に出てこなきゃ、俺はこんなことになってねえんだよ! 親父もお袋も、こいつを贔屓しやがって! 菊乃のせいで俺の人生はめちゃくちゃだ!」

なんと呆れた思考だろうか。すべては他人のせいなのだ。自分自身には顧みるところは一点もないと思っているのだろうか。この男はずっとこうした他責思考で生きてきたに違いない。だから、今も現実が受け入れられない。

「……そんな恨み言を言いにきたんですか?」

俺の後ろで菊乃が静かな声で言った。
そのあまりに落ち着ききった声音に、俺が驚いたくらいだ。
菊乃は俺の後ろから出てきて、丸中正を見据えた。

「伯父さんと伯母さん、会社のみんなの信用を失ったのは、あなた自身の行動の結果でしょう。正さん、あなたがパート社員にどれほど高圧的な態度を取り続けてきたか私は知っています。各店舗の若いアルバイトの子をしつこくナンパしていたのも知っています。営業と偽って、昼間からゲームセンターやカードショップ、パチンコに入り浸っていたのも知っています!」

立て板に水といった調子で、菊乃はずらずらと丸中正の罪状を上げ連ねる。
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