エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
丸中正の背中が見えなくなると、ほおと菊乃が息をついた。どうやら菊乃も張り詰めていたらしい。

「お見苦しいところを見せました」

困った顔でうつむく菊乃の背を支える。菊乃の背は汗が冷え、冷たくなっていた。

「いや、見ていてすっきりしたよ。言いたいことを言えたんだろう」
「はい、実はずっとずっと正さんの怠けや不正を見続けて苛立っていたので、言う機会ができてよかったです」

そう言って菊乃はにっこり晴れやかに笑った。

「逆上して暴れたり攻撃してくるヤツもいるから、こういうときは俺がいるとき限定にしてくれ」
「はい、わかりました。ご心配をおかけしましてすみません」
「格好よかったけどね」

俺の言葉に、菊乃が苦笑いする。言動や行動がやりすぎだと思っているのかもしれない。
俺としては、菊乃の新しい一面が見られたようで嬉しい。穏やかで優しいだけじゃないのだ。
きっと、俺の好きな人にはもっと違う一面がある。

「帰ろう、菊乃。夕食にして、来週のきみの誕生日の相談をしたい」
「え! 何もいりませんし、どこにも行かなくていいですよ!」
「いきなり遠慮しないでくれ。そうだな。マナー講習を兼ねてディナーなんてどうだろう」

菊乃の顔から緊張感が消え、俺にだけ見せるくつろいだ表情が見える。

「マナー講習、まだ一回しか行ってないので不安ですよ~」
「大丈夫、大丈夫」

菊乃のありとあらゆる表情を独り占めしたいと思いながら、彼女の腰をそっと抱いた。人混みから庇い、マンションのエントランスに導くために。


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