エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
「ありがとうございます。私が曽根さんに言っておきますので、正さんはご自分のお仕事に戻ってくださって結構です」
「なんなの、その言い方。おまえさあ、俺が親切にやってやってんのに、あしらおうとすんじゃねえよ」

正さんには短大時代から好かれている気がしない。誰にでも怒りっぽい彼が、従妹の私相手だと五割増しで不機嫌なのだ。
あまり考えたくはないけれど、私の仕事の領分に手出しするは粗探しをしたいからだろう。陰険な従兄に好かれたくはなくても、同僚として足を引っ張られるのは困る。

「おら、正! 菊乃に絡んでんじゃねえ。そんな暇があったら、新しい取引先を一件でもみつけてこい」

伯父の声に正さんがびくっと肩を揺らす。伯父に見えない角度でわかりやすく嫌そうな顔をし、それから私を憎々しげに睨みつけて離れていった。

「気にしないほうがいいわよ、菊乃ちゃん。正さんは、菊乃ちゃんの方が仕事ができるのが気に入らないのよ」

用事があって近づいてきていた工場パートの和田さんが言う。正さんはパート社員の女性たちにもきつくあたるので嫌われているのだ。

「あんな人がこのマルナカ弁当を継いだら私辞めちゃうわ」
「そんなこと言わないでください、和田さん」
「菊乃ちゃんが社長の跡を継いでくれたらいいのに。姪っ子だし、正さんよりよほど資質があるわよ。誰に対しても思いやりがあるし、仕事は早くて的確だし」
「私なんかには務まりませんよ」

苦笑いして答えるのは割と本心だ。マルナカ弁当は好きだけれど、社長を目指しているわけじゃない。正社員として、社長の身内として恥ずかしくない行動を心掛けているだけ。
あとは、こういった言葉を正さんが耳にしないといいなと思う。私もパートさんたちも、もっときつく当たられるだろうから。
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