エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
博已さんが私の手から証書を受け取りしげしげと眺める。先日、マナー講習と英会話スクールの修了書を見せたときも丁寧に見てくれた。

「頑張ったね、菊乃。向こうでの生活の不安が少しは薄れたかい?」
「まったくイタリア語を知らなかったときよりは……。でも、まだ不安ですよ!」
「買い物なんかは付き合うし、困ったら俺がいる」
「博已さんは、イタリア語も完璧なんでしょう?」
「きみと同じ程度だよ。でも、ふたりで力を合わせたら生活できそうな気がしてくるだろう」

博已さんは控えめに笑う。そんなふうに言うけれど、絶対私よりできるに決まっている。若い頃はスペインに行っていて、そちらの言葉もまだ覚えていて喋れるそうだから、きっと頭の出来が根本から違うのだ。

「どうしても困ったら、大使館にイタリア語が堪能な職員がいるから教えてもらおう」
「大使館って外務省の職員ばかりなんですよね。みんな語学が得意そう」
「そうでもない。テストで点は取れてもペラペラは喋れないという人も実は結構いるんだ。だから、語学研修はみんなまあまあ必死だよ」

博已さんはくすっと笑って、続けて説明する。

「あと、大使館職員はほとんど外務省の人間だけど、在外公館警備対策官として警察庁や民間から、防衛駐在官として自衛隊から出向してもらうこともある。運転手やシェフなどの役務職員は民間から登用で大使公邸に勤務。大使館内の仕事に現地職員を採用する場合もある」

なるほど、結構日本からいろいろな人が赴任しているのだ。さらにその家族が一緒に現地にいる。私の仕事はそういった人たちとのコミュニケーションも含まれるのだろう。家族なら日本語で大丈夫だろうし、現地職員の人は英語が通じるならまだ話せる。
< 72 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop