エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
「菊乃」

博已さんが証書をテーブルに戻し、私に向かって腕を広げる。私はおずおずとその腕の中に納まった。日課のスキンシップだ。気にしなくていいと言われるので、シャワーも浴びていないのだけれど、本当にいいのかしら。

「博已さん、お夕飯の準備が」
「IHコンロも点いていないだろう。それなら大丈夫」

博已さんが私の髪に顔をうずめる。汗臭くないかなあと心配になりながら、私は博已さんのシャツの胸に顔を押し付けた。腕を腰に回してぎゅっとしがみつく。

ああ、幸せ。
男性と交際したことがないから知らなかったけれど、ハグって安心するものなのだ。ストレスが減るって聞いたことがある。抱き合っているとそれだけで癒されていくのを実感する。

「菊乃、もしかして疲れてるのか?」

博已さんの腕の中でついついうっとり幸せにひたっていたら、博已さんの気づかわしげな声が聞こえてきた。私は驚いて顔をあげる。

「いいえ、疲れてませんよ!」

すると博已さんが私の頬を両手で包んだ。そしてじいっと見下ろしてくる。まるでキスの直前みたい。
心臓がどかどかとせわしなく鳴り響きだし、もう緊張で倒れそう。
そんな私の様子を、やはり疲れだと勘違いした博已さんはふっと控えめに微笑んだ。

「今日は暑かったからな。外を歩き回るだけで疲れるだろう。夕食は総菜を買ってくると言っていたな。残りは俺が準備するよ」
「や、ほんと、だ、大丈夫ですって! 元気いっぱいです!」

博已さんが私の腰をするりと抱いた。そのままソファにエスコートされ座らされてしまう。

「いい子にしていなさい」

子ども扱いされた気がするのに、博已さんの包容力のある態度に胸がきゅんどころかずぎゅんとくる。ああ、やっぱり素敵な人だ、私の旦那様って。
私ばかりがときめいてしまって、なんだかちょっと苦しい。博已さんは恋をしてはいけない人なのに……。

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