エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
八月の最終週、イタリアに出発する日がとうとうやってきた。

博已さんのマンションは分譲タイプなのでそのままにしていくそうだ。たまに実家のご両親が使うと聞いている。車は処分した。
荷物は衣類がほとんど。家具などは備え付けのものがあると聞いている。

私たちはそれぞれスーツケースひとつを持ち、成田空港から飛び立った。
十四時間のフライトとは聞いていた。そもそも海外に行くのが初めての私は、半日我慢すれば到着なんて近いと思っていたのだけれど、実際長時間座っているのはかなりくたびれた。夜間のフライトで早朝に到着する便だったというのに、妙に神経が昂りあまり眠れずにいるうちトランジットのフランクフルト空港に到着。二時間ほど空港内で過ごし、この頃ようやく眠気がやってきたものの、空港の待合室で眠りこけるわけにもいかない。

「菊乃、大丈夫か?」

眠そうな私を見かねて博已さんが声をかけてくる。

「なんか体内時計がおかしいっていうか。変な感じですが、大丈夫です」
「夜に出発してかなりの時間が経っているのに、まだ夜が明けていないからだろうな」

空港の大きな窓ガラスからはドイツの空。まだ暗く、空港のあかり以外はよく見えない。

「ここからはすぐだよ。もう少し頑張れるか?」
「はい。到着したら大使館にご挨拶に行くんですよね。大丈夫ですよ!」
「先に住まいに行くよ。到着は早朝だからな」

空港内のカフェで熱いコーヒーを飲み、乗り継ぎだ。
フィウミチーノ空港に到着したのは朝五時だった。天気が良くないのか初めて降り立ったイタリアはかすみがかかっていた。しかし、飛行機の窓から見えた景色は歴史的な建造物が多いように思えた。
< 74 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop